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与謝蕪村がその生涯に残した発句は約2850句あります。ここに掲げるのは玉城司著『現代語訳付き蕪村句集』(角川ソフィア文庫)に採録された1000句です。句の配列は詠まれた年代順とし、書籍と同じ通し番号を付してあります。
句の表記はWEB版のために改めている場合があります。(繰り返しを示す踊字には「/\」を宛てています)。その他詳細は前掲書をご参照下さい。
なお、この1000句に採られなかった発句について『蕪村句集続編』のページに順次取上げて注解しています。



0001尼寺や十夜に届く鬢葛
0002梅さげた我に師走の人通り
0003虱とる乞食の妻や梅がもと
0004摺鉢のみそみめぐりや寺の霜
0005行年や芥流るゝさくら川
0006我泪古くはあれど泉かな
0007涼しさに麦を月夜の卯兵衛哉
0008柳散清水涸れ石処々
0009古庭に鴬啼きぬ日もすがら
0010我が手にわれをまねくや秋のくれ
0011猿どのゝ夜寒訪ゆく兎かな
0012まるめろはあたまにかねて江戸言葉
0013おし鳥に美をつくしてや冬木立
0014老武者と大根あなどる若菜哉
0015百とせの枝にもどるや花の主
0016我庵に火箸を角や蝸牛
0017時鳥画に鳴け東四郎二郎
0018みじか夜や六里の松に更たらず
0019兼好ハ絹もいとわじ更衣
0020せきれいの尾やはし立をあと荷物
0021去られたる身を踏込で田植哉
0022とかくして一把に折ぬ女郎花
0023秋かぜのうごかして行案山子哉
0024一雨の一升泣やほとゝぎす
0025蝉も寝る頃や衣の袖畳
0026夏河を越すうれしさよ手に草履
0027肌寒し己が毛を噛木葉経
0028春の海終日のたり/\かな
0029きぬきせぬ家中ゆゝしき衣更
0030一陣は佐々木二陣は梶のふね
0031辛崎の朧いくつぞ与謝の海
0032弓取の帯の細さよたかむしろ
0033半日の閑を榎やせみの声
0034廿日路の背中に立や雲の峰
0035飛のりのもどり飛脚や雲の峰
0036虫干や甥の僧訪ふ東大寺
0037月今宵松にかへたるやどりかな
0038一筋も弃たる枝なき柳かな
0039東へも向磁石あり蝸牛
0040横に降る雨なき京の柳かな
0041象の眼の笑ひかけたり山桜
0042狩ぎぬの袖の裏這ふほたる哉
0043挑灯を消せと御意ある水鶏哉
0044関の戸に水鶏のそら音なかり鳬
0045堂守の小草ながめつ夏の月
0046烏稀に水又遠しせミの声
0047主しれぬ扇手に取る酒宴哉
0048手すさびの団画ん草の汁
0049白蓮を切らんとぞおもふ僧のさま
0050鮎くれてよらで過行夜半の門
0051青梅に眉あつめたる美人哉
0052川狩や帰去来といふ声す也
0053水の粉やあるじかしこき後家の君
0054愚痴無智のあまざけ造る松ヶ岡
0055腹あしき僧こぼしゆく施米哉
0056鮒鮓の便りも遠き夏野哉
0057大粒な雨はいのりの奇特哉
0058負腹の守敏も降ラす旱かな
0059温泉の底に我足見ゆる今朝の秋
0060秋来ぬと合点させたる嚔かな
0061稲妻や波もてゆへる秋津しま
0062四五人に月落かゝるおどり哉
0063徹書記のゆかりの宿や玉祭
0064染あえぬ尾のゆかしさよ赤蜻蛉
0065夕露や伏見の角力ちりぢりに
0066負まじき角力を寝ものがたり哉
0067古御所や虫の飛つく金屏風
0068小狐の何にむせけむ小萩はら
0069錦する秋の野末の案山子哉
0070小鳥来る音うれしさよ板庇
0071身の闇の頭巾も通る月見かな
0072梨の園に人彳めり宵の月
0073月天心貧しき町を通りけり
0074うき人に手をうたれたるきぬた哉
0075鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分哉
0076遠近おちこちと打つきぬた哉
0077秋の夜の灯を呼ぶ越シの筧哉
0078秋雨や水底の草を踏わたる
0079足もとの秋の朧や萩の花
0080栗飯や根来法師の五器折敷
0081かじか煮る宿に泊りつ後の月
0082去来去移竹うつりぬ幾秋ぞ
0083熊野路や三日の粮の今年米
0084うら枯や家をめぐりて醍醐道
0085楠の根を静にぬらすしぐれ哉
0086初冬や日和になりし京はづれ
0087屋ねふきの落葉蹈なり閨のうへ
0088みよしのやもろこしかけて冬木立
0089寒菊を愛すともなき垣根哉
0090火桶炭団を喰事夜ごと/\にひとつづゝ
0091炭団法師火桶の窓より覗ひけり
0092炉開や裏町かけて角屋しき
0093こがらしや覗て逃る淵のいろ
0094こがらしや何に世わたる家五軒
0095凩や広野にどうと吹起る
0096あなたうと茶もだぶ/\と十夜哉
0097大兵のかり寝あハれむふとん哉
0098孝行な子ども等にふとん一ツづつ
0099能ふとん宗祇とめたるうれしさに
0100乕の尾をふみつゝ裾にふとん哉

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0101大鼾そしれば動く生海鼠かな
0102生海鼠にも鍼こゝろむる書生哉
0103鰒喰へと乳母はそだてぬ恨かな
0104いもが子は鰒喰ふほどと成にけり
0105ふく汁の君よ我等よ子期伯牙
0106変化すむやしき貰ふて冬籠
0107勝手迄誰が妻子ぞふゆごもり
0108売喰の調度のこりて冬ごもり
0109磯ちどり足をぬらして遊びけり
0110物云ふて拳の鷹をなぐさめつ
0111寒月や門をたゝけば沓の音
0112寒月に木を割寺の男哉
0113縫ふて居る傍に紙子待身哉
0114宿老の紙子の肩や朱陳村
0115宿かさぬ灯影や雪の家つづき
0116宿かせと刀投出す雪吹哉
0117既得し鯨や迯て月ひとり
0118真結の足袋はしたなき給仕哉
0119足袋はいて寝る夜物うき夢見哉
0120書記典主故園に遊ぶ冬至哉
0121木のはしの坊主のはしや鉢たゝき
0122子を寝せて出行闇やはちたゝき
0123極楽のちか道いくつ寒念仏
0124打かけの妻もこもれり薬喰
0125炭うりに鏡見せたる女かな
0126庵買うて且うれしさよ炭五俵
0127貌見せや蒲団をまくる東山
0128貌見世や夜着を離るゝいもがもと
0129年の内の春ゆゝしさよ古暦
0130小僧等に法問させて年忘
0131節季候や顔つゝましき小風呂敷
0132臑白き従者も見へけり花の春
0133寝ごゝろやいづちともなく春は来ぬ
0134鴬の枝ふみはづすはつねかな
0135うぐひすのあちこちとするや小家がち
0136難波女や京を寒がる御忌詣
0137藪入の夢や小豆のにへる中
0138出代や春さめ/\と古葛籠
0139兀山や何にかくれてきじの声
0140春雨にぬれつゝ屋根の毬哉
0141はるさめや綱が袂に小でうちん
0142春雨や小磯の小貝ぬるゝほど
0143雛見世の灯を引くころや春の雨
0144春雨や人住ミてけぶり壁を洩る
0145糸桜灯孤の書院かな
0146苗代や鞍馬のさくら散にけり
0147山姥の遊びのこして遅桜
0148風声の下り居の君や遅桜
0149葉ざくらや碁気に成行南良の京
0150拾ひのこす田螺も月の夕かな
0151ことさらに唐人屋敷初霞
0152高麗船のよらで過行霞哉
0153立雁のあしもとよりぞ春の水
0154春の水山なき国を流れけり
0155島原の草履にちかき小蝶哉
0156伏勢の錣にとまる胡蝶哉
0157奇楠臭き人の仮寐や朧月
0158花の幕兼好を覗く女あり
0159花ちりてこの間の寺と成にけり
0160菜の花や和泉河内へ小商
0161菜の花や壬生の隠家誰/\ぞ
0162山鳥の尾をふむ春の入日哉
0163凧巾きのふの空のありどころ
0164春の夜に尊き御所を守身かな
0165春の夜の盧生が裾に羽織かな
0166春の夜や盥をこぼす町外れ
0167春の夜や宗佐が庭を歩行けり
0168藤の茶屋あやしき夫婦休けり
0169行春や撰者を恨む歌の主
0170ゆく春や歌も聞へず宇佐の宮
0171行春や眼に合はぬめがね失ひぬ
0172けふのみの春を歩ひて仕舞けり
0173衣がへ人も五尺のからだ哉
0174物くるゝ人来ましけり更衣
0175たのもしき矢数のぬしの袷哉
0176更衣野路の人はつかに白し
0177大兵の廿チあまりや更衣
0178牡丹散て打かさなりぬ二三片
0179閻王の口や牡丹を吐んとす
0180やどり木の目を覚したる若葉哉
0181不二ひとつうづみのこして若葉哉
0182蚊屋を出て奈良を立ゆく若ば哉
0183動く葉もなくておそろし夏木立
0184かしこくも茶店出しけり夏木立
0185休み日や鶏なく村の夏木立
0186上見えぬ笠置の森やかんこ鳥
0187足跡を字にもよまれず閑古鳥
0188金堀る山本遠し閑古鳥
0189むつかしき鳩の礼儀やかんこどり
0190蚊屋の内にほたるはなしてア丶楽や
0191三軒家大坂人のかやりかな
0192薬園に雨ふる五月五日かな
0193五月雨や美豆の寝覚の小家がち
0194さみだれのうつほばしらや老が耳
0195みじか夜や地蔵を切て戻りけり
0196みじか夜や毛むしの上に露の玉
0197見うしなふ鵜の出所や鼻の先
0198誰住ミて樒流るゝ鵜川哉
0199瓜小家の月にやおはす隠君子
0200ぬけがけの浅瀬わたるや夏の月

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0201日帰りの兀山越るあつさ哉
0202雪信が蝿打払硯かな
0203夕貌の花噛ム猫や余所ごゝろ
0204夕顔や行燈さげたる君は誰
0205秋風におくれて吹や秋の風
0206白露や茨の刺にひとつづゝ
0207茨野や夜はうつくしき虫の声
0208虫売のかごとがましき朝寝哉
0209物焚て花火に遠きかゝり舟
0210欠ケ/\て月もなくなる夜寒哉
0211壁隣ものごとつかす夜寒哉
0212山鳥の枝踏かゆる夜長哉
0213きくの露受て硯のいのち哉
0214朝霧や村千軒の市の音
0215人を取淵はかしこ歟霧の中
0216角文字のいざ月もよし牛祭
0217雨乞の小町が果やおとし水
0218竜王へ雨を戻すやおとし水
0219あちらむきに鴫も立たり秋のくれ
0220一わたしヲくれた人にしぐれ哉
0221落葉して遠く成けり臼の音
0222西吹ケば東にたまる落ば哉
0223口切や五山衆なんどほのめきて
0224宿替にすぽりとはまる火燵哉
0225腰ぬけの妻うつくしき火燵哉
0226凩や碑をよむ僧一人
0227草枯て狐の飛脚通りけり
0228石に詩を題して過る枯野哉
0229御火たきや霜うつくしき京の町
0230冬ごもり燈下に書すと書れたり
0231桃源の路次の細さよ冬ごもり
0232冬ごもり妻にも子にもかくれん坊
0233戸に犬の寝がへる音や冬籠
0234水鳥や百性ながら弓矢取
0235水鳥やてうちんひとつ城を出る
0236草も木も小町が果や鴛の妻
0237鴛や花の君子は殺てのち
0238易水に葱流るゝ寒哉
0239借具足我になじまぬ寒かな
0240懇な飛脚過ゆく深雪哉
0241物書いて鴨に換けり夜の雪
0242大雪と成けり関の戸ざし比
0243大雪や上客歩行で入おはす
0244深草の傘しのばれぬ霰哉
0245古池に草履沈みてみぞれかな
0246町はづれいでや頭巾は小風呂敷
0247みどり子の頭巾眉深きいとおしみ
0248闇の夜に頭巾を落すうき身哉
0249頼朝の頭巾仕立る笑ひ哉
0250埋火や物そこなはぬ比丘比丘尼
0251埋火をさがす郭巨がきせる哉
0252埋火や春に減ゆく夜やいくつ
0253寒梅やほくちにうつる二三輪
0254宝舟慶子が筆のすさび哉
0255花守の身は弓矢なき案山子哉
0256しら梅のかれ木に戻る月夜哉
0257寝た人に眠る人あり春の雨
0258熊谷も夕日まばゆき雲雀哉
0259帰る雁有楽の筆の余り哉
0260沓おとす音のみ雨の椿かな
0261木の下が蹄のかぜや散さくら
0262衣手は露の光りや紙雛
0263法然の珠数もかゝるや松の藤
0264御手打の夫婦なりしを更衣
0265西行は死そこなふて袷かな
0266時鳥柩をつかむ雲間より
0267めしつぎの底たゝく音やかんこ鳥
0268味噌汁を喰ぬ娘の夏書哉
0269みじか夜や枕にちかき銀屏風
0270みじか夜や同心衆の河手水
0271かはほりやむかひの女房こちを見る
0272人妻の暁起や蓼の雨
0273砂川や或は蓼を流れ越す
0274雨と成恋はしらじな雲の峯
0275梶の葉を朗詠集のしをり哉
0276いなづまや二折三折剣沢
0277いな妻や八丈かけてきくた摺
0278月更て猫も杓子も踊かな
0279故さとの坐頭に逢ふや角力取
0280飛入の力者あやしき角力哉
0281蓑笠之助殿の田の案山子哉
0282花鳥の彩色のこすかゞしかな
0283十六夜の落るところや須磨の波
0284温公の岩越す音や落し水
0285笛の音に波もより来る須磨の秋
0286鷺ぬれて鶴に日の照時雨哉
0287時雨るや蓑買人のまことより
0288又嘘を月夜に釜の時雨かな
0289ゆふがほのそれは髑髏歟鉢たゝき
0290口切や北も召れて四畳半
0291思ふ事いわぬさまなる生海鼠哉
0292実盛の紙子は夜のにしき哉
0293埋火や我かくれ家も雪の中
0294らうそくの泪氷るや夜の鶴
0295年守や乾鮭の太刀鱈の棒
0296かづらきの紙子脱ばや明の春
0297鴬を雀歟と見しそれも春
0298鴬の麁相がましき初音かな
0299万歳や踏かためたる京の土
0300出る杭を打うとしたりや柳哉

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0301行雲を見つゝ居直る蛙哉
0302喰ふて寝て牛にならばや桃の花
0303うすぎぬに君が朧や峨眉の月
0304薬盗む女やは有おぼろ月
0305ほとゝぎす平安城を筋違に
0306宵/\の雨に音なし杜若
0307晋人の尻べた見えつ簟
0308旅芝居穂麦がもとの鏡たて
0309腹あしき隣同士のかやりかな
0310学びする机の上のかやり哉
0311みじか夜や芦間流るゝ蟹の泡
0312明やすき夜や稲妻の鞘走り
0313みじか夜を眠らでもるや翁丸
0314暑き日の刀にかゆる扇哉
0315絵団扇のそれも清十郎にお夏哉
0316学問は尻からぬけるほたる哉
0317さみだれや名もなき川のおそろしき
0318あら涼し裾吹蚊屋も根なし草
0319天にあらば比翼の篭や竹婦人
0320鮓つけて誰待としもなき身哉
0321貧乏に追つかれけりけさの秋
0322秋たつや何におどろく陰陽師
0323萍のさそひ合せておどり哉
0324名月やうさぎのわたる諏訪の海
0325花すゝきひと夜はなびけ武蔵坊
0326さくらさへ紅葉しにけり鹿の声
0327恋風はどこを吹たぞ鹿の角
0328猪の狸ね入やしかの恋
0329白菊や呉山の雪を笠の下
0330みのむしのぶらと世にふる時雨哉
0331みの虫のしぐれや五分の智恵袋
0332しぐれ松ふりて鼠の通ふ琴の上
0333しぐるゝや鼠のわたる琴の上
0334みのむしの得たりかしこし初しぐれ
0335しぐるゝや山は帯するひまもなし
0336化そうな傘かす寺の時雨哉
0337古傘の婆裟と月夜のしぐれ哉
0338ホトギ打て鰒になき世の人訪ん
0339鰒の面世上の人をにらむ哉
0340音なせそたゝくは僧よふくと汁
0341雪舟の不二雪信が佐野いづれ歟寒き
0342雪折や雪を湯に焚釜の下
0343罷出たものは物ぐさ太郎月
0344手ごたへの雲に花あり弓はじめ
0345三椀の雑煮かゆるや長者ぶり
0346日の光今朝や鰯のかしらより
0347青柳や我大君の艸か木か
0348女倶して内裏拝まんおぼろ月
0349ゆく年の女歌舞伎や夜の梅
0350いざや寝ん元日は又翌の事
0351両村に質屋一軒冬木立
0352このむらの人は猿也冬木だち
0353錦木のまことの男門の松
0354鴬の二声はなく枯木かな
0355春の夜や宵あけぼのゝ其中に
0356燕啼て夜虵をうつ小家哉
0357うつゝなきつまみごゝろの胡蝶哉
0358菜の花や油乏しき小家がち
0359春の暮家路に遠き人斗
0360岩倉の狂女恋せよほとゝぎす
0361絶頂の城たのもしき若葉哉
0362笋や甥の法師が寺訪ん
0363若竹や夕日の嵯峨と成にけり
0364うき草を吹あつめてや花むしろ
0365白雨や筆もかはかず一千言
0366丈山の口が過たり夕すゞみ
0367ゆふがほに秋風そよぐ御祓河
0368江渺々として釣の糸吹あきの風
0369かなしさや釣の糸ふく秋の風
0370秋風や酒肆に詩うたふ漁者樵者
0371薄見つ萩やなからむこのほとり
0372茸狩や頭を挙れば峰の月
0373時雨るや我も古人の夜に似たる
0374斧入レて香におどろくや冬木立
0375杜父魚のえものすくなき翁哉
0376玉霰漂母が鍋をみだれうつ
0377いざ雪見容す蓑と笠
0378としひとつ積るや雪の小町寺
0379花の春誰ソやさくらの春と呼
0380我宿のうぐひす聞む野に出て
0381二もとのむめに遅速を愛すかな
0382滝口に燈を呼声やはるの雨
0383よき人を宿す小家やおぼろ月
0384飢鳥の花踏こぼす山ざくら
0385なの花や月は東に日は西に
0386ゆく春やおもたき琵琶の抱心
0387地車のとゞろとひゞくぼたんかな
0388寂として客の絶間のぼたん哉
0389うは風に音なき麦をまくらもと
0390飯盗む狐追うつ麦の秋
0391みじか夜の闇より出て大ゐ川
0392みじか夜や浪うちぎはの捨笧
0393いとまなき身にくれかゝるかやり哉
0394夕風や水青鷺の脛をうつ
0395老なりし鵜飼ことしは見えぬ哉
0396目にうれし恋君の扇真白なる
0397後家の君たそかれがほのうちは哉
0398花いばら故郷の路に似たるかな
0399愁ひつゝ岡にのぼれば花いばら
0400夜水とる里人の声や夏の月

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0401閻王に勘当うけて夕すゞみ
0402いなづまや堅田泊の宵の空
0403細腰の法師すゞろにおどり哉
0404子鼠のちゝよと啼や夜半の秋
0405秋の夜や古き書読む南良法師
0406貴人の岡に立聞きぬた哉
0407故郷や酒はあしくとそばの花
0408鹿ながら山影門に入日哉
0409菊つくり汝はきくのやつこなる
0410門を出れば我も行人秋のくれ
0411老が恋わすれんとすればしぐれかな
0412時雨音なくて苔にむかしをしのぶ哉
0413炉に焼てけぶりを握る紅葉哉
0414狐火の燃つく斗枯尾花
0415寺寒く樒はみこぼす鼠哉
0416我頭巾うき世のさまに似ずもがな
0417鍋さげて淀の小橋を雪の人
0418愚に耐よと窓を暗す雪の竹
0419歯豁に筆の氷を噛ム夜哉
0420乾鮭や琴に斧うつひゞき有
0421霊運も今宵はゆるせとしわすれ
0422ほうらいの山まつりせむ老の春
0423白梅や墨芳しき鴻鸕館
0424雉子うちてもどる家路の日は高し
0425御忌の鐘ひゞくや谷の氷まで
0426剛力は徒に見過ぬ山ざくら
0427指南車を胡地に引去ル霞哉
0428瀟湘の雁のなみだやおぼろ月
0429蓴生ふ池のみかさや春の雨
0430月に聞て蛙ながむる田面哉
0431海棠や白粉に紅をあやまてる
0432遅き日のつもりて遠きむかし哉
0433異艸も刈捨ぬ家のぼたん哉
0434みじか夜やいとま給る白拍子
0435でゞむしの住はてし宿やうつせ貝
0436実ざくらや死のこりたる庵の主
0437粽解て芦ふく風の音聞ん
0438蚊屋つりて翠微作らん家の内
0439若竹やはしもとの遊女ありやなし
0440せみ啼や行者の過る午の刻
0441雨にもゆる鵜飼が宿の蚊やり哉
0442此蘭や五助が庭にきのふまで
0443蘭夕狐のくれし奇南を炷む
0444しらつゆやさつ男の胸毛ぬるゝほど
0445ものゝふの露はらひ行弰かな
0446猪の露折かけておみなへし
0447かけいねに鼠のすだく門田哉
0448あだ花にかゝる恥なし種ふくべ
0449落水田ごとのやみと成にけり
0450旅人よ笠嶋かたれ雨の月
0451茨老すゝき痩萩おぼつかな
0452うき我にきぬたうて今は又止ミね
0453夕しぐれ蟇ひそみ音に愁ふかな
0454凩に鰓ふかるゝや鉤の魚
0455霜百里舟中に我月を領ス
0456居眠りて我にかくれん冬ごもり
0457鬼王が妻にをくれしふすま哉
0458大とこの屎ひりおはす枯野哉
0459むさゝびの小鳥はみ居る枯野哉
0460狐火や髑髏に雨のたまる夜に
0461漁家寒し酒に頭の雪を焼
0462わび禅師乾鮭に白頭の吟を彫ル
0463七くさやはかまの紐の片結び
0464鴬に終日遠し畑の人
0465みの虫の古巣に添ふて梅二輪
0466梅咲ぬどれがむめやらうめじややら
0467梅咲て帯買室の遊女かな
0468小冠者出て花見る人をとがめけり
0469なつかしき津守の里や田にしあへ
0470夜桃林を出て暁嵯峨の桜人
0471花を踏し草履も見えて朝寝かな
0472折釘に烏帽子かけたり春の宿
0473耕や五石の粟のあるじ貌
0474畠うつや鳥さへ啼ぬ山陰に
0475まだ長ふ成日に春のかぎりかな
0476ちりて後おもかげにたつぼたん哉
0477ぼたん切て気のおとろひしゆふべ哉
0478ほとゝぎす待や都のそらだのめ
0479稲葉殿の御茶たぶ夜や時鳥
0480狂居士の首にかけた歟鞨鼓鳥
0481山人は人也かんこ鳥は鳥なりけり
0482かんこどり可もなく不可もなく音哉
0483さし汐に雨のほそ江のほたる哉
0484戸を明て蚊帳に蓮のあるじ哉
0485みじか夜や小見世明たる町はづれ
0486夏山や通ひなれたる若狭人
0487そばあしき京をかくして穂麦哉
0488夕立や草葉をつかむ村雀
0489ゆふだちや門脇どのゝ人だまり
0490椎の花人もすさめぬ匂かな
0491実ざくらや立よる僧もなかりけり
0492蝮の鼾も合観の葉陰哉
0493白萩を春わかち取ちぎり哉
0494宮城野の萩更科のそばにいづれ
0495秋風や干魚かけたる浜庇
0496仲丸の魂祭せむけふの月
0497月今よひあるじの翁舞出よ
0498盗人の首領哥よむけふの月
0499中/\にひとりあればぞ月を友
0500山の端や海を離るゝ月も今

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0501岡の家の海より明て野分哉
0502綿つみやたばこの花を見て休む
0503地下りに暮行野辺の薄哉
0504垣根潜る薄一もと真すほなる
0505釣上しBの巨口玉や吐
0506うつくしや野分の後のとうがらし
0507紀の路にもおりず夜を行雁ひとつ
0508鹿の声小坊主に角なかりけり
0509起て居てもう寝たと云夜寒哉
0510巫女に狐恋する夜寒哉
0511夜を寒み小冠者臥たり北枕
0512黒谷の隣はしろしそばの花
0513秋の暮京を出て行人見ゆる
0514我を慕ふ女やはある秋のくれ
0515さびしさのうれしくも有秋のくれ
0516去年より又さぞしひぞ秋の暮
0517暮まだき星のかゝやくかれの哉
0518千どり聞夜を借せ君が眠るうち
0519西念はもう寝た里を鉢たゝき
0520花に俵太雪に君有鉢たゝき
0521からざけに腰する市の翁哉
0522芭蕉去てそのゝちいまだ年くれず
0523歳旦をしたり貌なる俳諧師
0524鴬の啼や小さき口明イて
0525春もやゝあなうぐひすよむかし声
0526梅遠近南すべく北すべく
0527水にちりて花なくなりぬ岸の梅 
0528やぶ入や浪花を出て長柄川
0529春風や堤長うして家遠し
0530一軒の茶見世の柳老にけり
0531古駅三両家猫児妻を呼妻来らず
0532春草路三叉中に捷径あり我を迎ふ
0533たんぽゝ花咲り三々五々五々は黄に
0534故郷春深し行々て又行々
0535春雨や珠数落したるにはたずみ
0536春雨やもの書ぬ身のあはれなる
0537さくら狩美人の腹や減却す
0538月光西にわたれば花影東に歩むかな 
0539花の香や嵯峨の燈火きゆる時
0540ゆく春や横河へのぼるいもの神
0541灌仏やもとより腹はかりのやど
0542更衣母なん藤原氏也けり
0543更衣矢瀬の里人ゆかしさよ
0544耳うとき父入道よほとゝぎす
0545白がねの花さく井出の垣根哉
0546おちこちに滝の音聞く若葉かな
0547峯の茶屋に壮士餉す若葉哉
0548みじか夜や葛城山の朝曇り
0549夏山や神の名はいさしらにぎて
0550こもり居て雨うたがふや蝸牛
0551ほの/\と粥にあけゆく矢数かな
0552朝比奈が曽我を訪ふ日や初がつを
0553麦秋や狐のゝかぬ小百姓
0554殿原の名古屋貌なる鵜川哉
0555渋柿の花ちる里と成にけり
0556ぼうふりの水や長沙の裏借屋
0557討はたす梵倫つれ立て夏野かな
0558谷路行人は小き若葉哉
0559浅河の西し東シす若葉哉
0560金屏のかくやくとして牡丹哉
0561南蘋を牡丹の客や福西寺
0562方百里雨雲よせぬぼたむ哉
0563尼寺やよき蚊帳たるゝ宵月夜
0564木がくれて名誉の家の幟哉
0565しのゝめや露の近江の麻畠
0566鮒ずしや彦根の城に雲かゝる 
0567鮓をおす石上に詩を題すべく
0568鮓の石に五更の鐘のひゞきかな
0569夢さめてあはやとひらく一夜ずし
0570若楓学匠書ミにめをさらす
0571酒を煮る家の女房ちよとほれた
0572青梅や微雨の中行飯煙
0573青梅をうてばかつちる青葉哉
0574芍薬に紙魚うち払ふ窓の前
0575若竹や是非もなげなる芦の中
0576さみだれや鳥羽の小路を人の行
0577皐雨や貴布禰の社燈消る時
0578小田原で合羽買たり五月雨
0579さみだれの大井越たるかしこさよ
0580さみだれや大河を前に家二軒
0581射干して囁く近江やわたかな
0582我宿に物わすれ来て照射哉
0583一鍬の蓼うつしけり雨ながら
0584音を啼や我も藻に住ム幮のうち
0585路辺の刈藻花さく宵の雨
0586参河なる八橋もちかき田植かな
0587鯰得てもどる田植の男かな
0588早乙女やつげのおぐしはさゝで来し
0589なつかしき夏書の墨の匂ひかな
0590蚊の声すにんどうの花の散ルたびに
0591蚊帳の内に朧月夜の内侍哉
0592涼しさや鐘をはなるゝかねの声
0593自剃して涼とる木のはし居かな
0594ぎをん会や僧の訪よる梶が許
0595脱すてゝ我ゆかしさよ薄羽折
0596ゆふがほや黄に咲たるも有べかり 
0597葛水や入江の御所にまうずれば
0598葛を得て清水に遠きうらみ哉
0599汗入レて妻わすれやめや藤の茶屋
0600掛香をきのふわすれぬ妹がもと

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0601いづちよりいづちともなき苔清水
0602二人してむすべば濁る清水哉
0603百日紅やゝちりがての小町寺
0604蠅いとふ身を古郷に昼寝哉
0605阿古久曾を夢の行衛や竹婦人
0606雨後の月誰そや夜ぶりの脛白き
0607川狩や楼上の人の見しり貌
0608裸身に神うつりませ夏神楽
0609天満祭大魯に逢し人もあり
0610ところてん逆しまに銀河三千尺
0611雲の峰に肘する酒呑童子かな
0612蝉啼や僧正坊のゆあみ時 
0613かりそめに早百合生ケたり谷の坊
0614端居して妻子を避る暑かな
0615佐保河を蔵にめぐらすにざけかな
0616見のこすや夏をまだらの京鹿子
0617秋立や素湯香しき施薬院
0618恋さま/\願の糸も白きより
0619魂祭り王孫いまだ帰り来ず
0620つと入や納戸の暖簾ゆかしさよ
0621つと入やしる人に逢ふ拍子ぬけ
0622相阿彌の宵寝おこすや大もんじ
0623地蔵会やちか道を行祭客
0624にしきゞの門をめぐりておどりかな
0625八朔もとかく過行おどり哉
0626松明消て海少し見る花野かな
0627市人の物うちかたる露の中 
0628生きて世にありのすさみの角力取
0629追風に薄刈とる翁かな
0630草の戸の心にそまぬ糸瓜かな
0631花火せよ淀の御茶屋の夕月夜
0632三径の十歩に尽て蓼の花
0633瀬田降て志賀の夕日や江鮭
0634椀久も狂ひ出来よ夜半の月
0635猿三声我も又月に泣夜かな
0636花守は野守に劣るけふの月
0637月見ればなみだに砕く千々の玉
0638十六夜やくじら来そめし熊野浦 
0639鱸釣て後めたさよ浪の月
0640茸狩ん似雲が鍋の煮るうち
0641渡り鳥雲の機手のにしきかな
0642鵯のうたゝ来啼やうめもどき
0643秋はものゝそばの不作もなつかしき 
0644夜の蘭香にかくれてや花白し
0645さればこそ賢者は富ず敗荷
0646二の尼のむかごにすさむ筐かな
0647天狗風のこらず蔦の葉裏哉
0648物書に葉うらにめづる芭蕉哉
0649身にしむやなき妻のくしを閨に踏
0650日は斜関屋の鎗にとんぼかな
0651きちかうも見ゆる花屋が持仏堂
0652高燈籠惣検校の母の宿
0653むし啼や河内通ひの小でうちん
0654小百姓鶉を取老と成にけり
0655待宵や女主に女客
0656駒迎殊にゆゝしや額白
0657みの虫や笠置の寺の麁朶の中
0658朝がほや手拭のはしの藍をかこつ
0659芦の花漁翁が宿の煙飛
0660まんじゆさげ蘭に類ひて狐啼
0661栗備ふ恵心の作のみだ仏
0662手燭して色失へる黄菊かな
0663鬼灯や清原の女が生写し
0664毛見の衆の舟さし下だせ最上河
0665人は何に化るかもしらじ秋のくれ
0666木曽路行ていざ年寄ん秋独リ 
0667冬ちかし時雨の雲もこゝよりぞ
0668初しぐれ眉にゑぼしの雫哉
0669古傘の婆娑としぐるゝ月夜哉
0670古寺の藤あさましき落葉かな
0671落葉してしのび車の響かな
0672待人の足音遠き落葉哉
0673菊は黄に雨疎そかに落葉かな
0674葱買て枯木の中を帰りけり
0675我も死して碑に辺せむ枯尾花
0676千葉どのゝ仮家引ケたり枯尾花
0677破レぬべき年も有しを古火桶
0678小野の炭匂ふ火桶の穴めかな
0679こがらしや鐘に小石を吹当る
0680霜あれて韮を刈取翁かな
0681蒲公のわすれ花有路の霜
0682松明ふりて舟橋わたる夜の霜
0683古郷に一夜は更るふとんかな
0684いばりせしふとんほしたり須磨の里
0685范蠡が書ミかく衣や鰒の皮
0686邯鄲の市に鰒見る雪の朝
0687袴着て鰒喰ふて居る町人よ
0688冬ごもり燈光虱の眼を射る
0689信濃なる僕置けり冬ごもり
0690加茂人の火を燧音や小夜鵆
0691水鳥や岡の小家の飯煙
0692周回十里水鳥見えぬ寒かな
0693水仙や寒き都のこゝかしこ
0694炉開や雪中庵のあられ酒
0695焼火して鬼こもるらし夜の雪
0696住吉の雪にぬかづく遊女哉
0697風呂敷に乾鮭と見しは卒塔婆哉
0698乾鮭の骨にひゞくや五夜のかね
0699埋火やありとは見えて母の側
0700いざ雪車にのりの旅人とく来ませ

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0701彳て女さゝやく師走かな
0702宝舟梶がよみ歌ゆかしさよ
0703己が羽の文字もよめたり初烏 
0704養父入は中山寺の男かな
0705青柳や芹生の里の芹の中
0706初ざくら其きさらぎの八日かな
0707馬下リて高根のさくら見付たり
0708嵯峨一ト日閑院様のさくら哉
0709冷飯も乏しき須磨の桜かな
0710足よはの宿とるため歟遅ざくら
0711我帰る路いく筋ぞ春の艸
0712筋違にふとん敷たり宵の春
0713菜の花や鯨もよらず海くれぬ
0714何地去ル日ぞ遅々として雨の中
0715我影をうしろへ春の行衛かな
0716ゆく春や白き花見ゆ垣のひま
0717はしたなき女嬬のくさめや時鳥
0718歌なくてきぬぎぬつらしほとゝぎす
0719ふたり寝の蚊屋もる月のせうと達
0720初秋や余所の灯見ゆる宵のほど
0721女郎花二もと折ぬけさの秋
0722絶々の雲しのびずよ初しぐれ
0723もしほぐさ柿のもと成落葉さへ
0724息杖に石の火を見る枯野哉 
0725逢ぬ恋おもひ切ル夜やふくと汁
0726牙寒き梁の月の鼠かな
0727痩脛や病より起つ鶴寒し
0728頭巾着て声こもりくの泊瀬法師
0729うめちるや螺鈿こぼるゝ卓の上 
0730しら梅や北野ゝ茶店にすまひ取 
0731かはほりのふためき飛や梅の月 
0732針折て梅にまづしき女哉
0733宿の梅折取ほどになりにけり
0734花のみ歟もの云はぬ雨の柳哉
0735順礼の宿とる軒や猫の恋
0736池田より炭くれし春の寒哉
0737関守の火鉢小さき余寒哉
0738やぶいりや余所目ながらの愛宕山
0739やぶ入の宿は狂女の隣哉
0740初午や鳥羽四ツ塚の鶏の声 
0741莟とはなれもしらずよ蕗の薹
0742きじ鳴や御里御坊の苣畠
0743暁のあられ打ゆく椿哉
0744大和路の宮もわら屋もつばめ哉
0745大津絵に糞落しゆく燕かな 
0746美哉盛也新田にかゝる春の水
0747のふれんに東風吹伊勢の出店哉
0748さしぬきを足でぬぐ夜や朧月
0749祇や鑑や花に香炷ん草むしろ
0750眠たさの春は御室の花よりぞ
0751橘のかごとがましきあはせ哉 
0752山に添ふて小舟漕行若ばかな
0753ことば多く早瓜くるゝ女かな
0754明やすき夜をかくしてや東山
0755虹を吐てひらかんとする牡丹哉
0756採蓴をうたふ彦根の傖夫哉
0757銭亀や青砥もしらぬ山清水
0758丸盆の椎にむかしの音聞ん 
0759月に漕呉人はしらじあめの魚
0760三井寺や月の詩つくる踏落し 
0761秋寒し藤太が鏑ひゞく時 
0762洟たれて独碁をうつ夜寒かな
0763住ムかたの秋の夜遠き灯影哉
0764村百戸菊なき門も見えぬ哉
0765うぐひすのわするゝばかり引音哉
0766鴬や茨くゞりて高うとぶ
0767加茂堤太閣様のすみれかな
0768源八をわたりてうめのあるじかな
0769妹が垣根さみせん草の花咲ぬ
0770春雨やゆるい下駄借す奈良の宿
0771古河の流を引つ種おろし
0772よもすがら音なき雨や種俵
0773花に来て花にいねぶるいとまかな
0774居風呂に後夜きく花のもどり哉 
0775花見戻り丹波の鬼のすだく夜に
0776花盛六波羅禿見ぬ日なき
0777花に舞ハで帰るさにくし白拍子
0778傾城はのちの世かけて花見かな
0779花の御能過て夜を泣ク浪花人
0780かくれ住て花に真田が謡かな
0781花ちるや重たき笈のうしろより
0782ゆく水にちればぞ贈る花の雲
0783嵯峨へ帰る人はいづこの花にくれし
0784月に遠くおぼゆる藤の色香哉
0785飛かはすやたけごゝろや親雀
0786匂ひ有きぬもたゝまず春の暮
0787誰ための低きまくらぞ春の暮
0788きのふ暮けふ又くれてゆく春や
0789ゆくはるや同車の君のさゝめごと
0790春おしむ座主の聯句に召れけり
0791わするなよほどは雲助ほとゝぎす
0792かしこにてきのふも啼ぬかんこどり
0793燃立て貌はづかしき蚊やり哉
0794掴みとりて心の闇のほたる哉
0795帋燭して廊下過るやさつき雨
0796葛水や鏡に息のかゝる時
0797葛水に見る影もなき翁かな
0798葛水にうつらでうれし老が貌
0799宗鑑に葛水給ふ大臣かな
0800昼がほやすみれの後のゆかしさよ

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0801花はいさ月にふしみの翁かな
0802月見舟きせるを落す浅瀬かな
0803秋去ていく日になりぬ枯尾花
0804凩や何をたよりの猿おがせ
0805寒梅や奈良の墨屋があるじ貌
0806冬の梅きのふやちりぬ石の上
0807うぐひすの老母草に来ぬる師走哉
0808撞木町うぐひす西に飛去りぬ
0809家にあらで鴬きかぬひと日哉
0810具足師のふるきやどりや梅花
0811すみ/\にのこる寒さやうめの花
0812炉ふさいで南阮の風呂に入身哉
0813足よはのわたりて濁る春の水
0814里人よ八橋つくれ春の水
0815春の水にうたゝ鵜縄のけいこ哉
0816昼舟に狂女のせたり春の水
0817春水や四条五条の橋の下
0818垣越にものうちかたる接木哉
0819菜畠にきせるわするゝ接木哉
0820菜の花やみな出はらひし矢走舟
0821日くるゝに雉子うつ春の山辺哉
0822大門のおもき扉や春の暮
0823うたゝ寝のさむれば春の日くれたり
0824うぐひすに老がひが耳なかりけり
0825鶴は南うぐひすは北に啼日哉
0826今朝きつる鶯と見しに啼かで去
0827燈を置カで人あるさまや梅が宿
0828梅ちりてさびしく成しやなぎ哉
0829春雨や暮なんとしてけふも有 
0830股立のさゝだ雄ちぬ雄春の雨
0831春雨の中を流るゝ大河哉
0832春雨やものがたりゆく蓑と傘
0833春雨や鶴の七日を降くらす
0834春雨に下駄買泊瀬の法師かな
0835柴漬の沈みもやらで春の雨
0836春雨の中におぼろの清水哉
0837粟島へはだし参りや春の雨
0838遅き日や雉子の下リ居る橋の上 
0839柴刈に砦を出るや雉子の声
0840亀山へ通ふ大工やきじの声
0841河内女の宿に居ぬ日やきじの声
0842若草に根をわすれたる柳かな
0843旅人の鼻まだ寒し初ざくら
0844みよしのゝちか道寒し山ざくら
0845阿古久曽のさしぬきふるふ落花哉
0846花に遠く桜に近しよしの川
0847雲を呑で花を吐なるよしの山 
0848花散月落て文こゝにあらありがたや
0849花ちりて身の下やみやひの木笠
0850ゆく春や逡巡として遅ざくら
0851日枝の日をはたち重ねてぼたん哉
0852蓼の穂を真壺に蔵す法師哉
0853甲斐がねやほたでの上を塩車
0854鮎落て宮木とゞまるふもと哉
0855鮎落てたき火ゆかしき宇治の里
0856後の月鴫たつあとの水の中
0857後の月かしこき人を訪ふ夜哉
0858泊る気でひとり来ませり十三夜
0859三井寺に緞子の夜着や後の月
0860梺なる我蕎麦存す野分哉
0861市人のよべ問かはす野分かな
0862鳥さしの西へ過けり秋のくれ
0863淋し身に杖わすれたり秋の暮 
0864ひとり来て一人を訪ふや秋のくれ
0865流来て引板におどろくサンシヤウ魚
0866山陰や誰よぶこどり引板の音
0867親法師子法師も稲を担ひゆく
0868折くるゝ心こぼさじ梅もどき
0869梅もどき折や念珠をかけながら 
0870柿崎の小寺尊しうめもどき
0871山暮れて紅葉の朱を奪ひけり
0872二荒や紅葉が中の朱の橋
0873よらで過る藤沢寺のもみぢ哉
0874村紅葉会津商人なつかしき
0875いさゝかな価乞はれぬ暮の秋
0876くれの秋有職の人は宿に在す
0877跡かくす師の行方や暮の秋
0878朔日や三夕ぐれを一しぐれ
0879半江の斜日片雲の時雨哉
0880撥音に散るは寿永の木の葉哉
0881桐火桶無絃の琴の撫ごゝろ 
0882松島で死ぬ人もあり冬籠
0883冬川や舟に菜を洗ふ女有
0884ふゆ河や誰引すてゝ赤蕪
0885嵐雪にふとん着せたり雪の宿
0886楽書の壁あはれ也今朝の雪
0887登蓮が雪に蓑たく竈の下
0888雪に来よといふ人住やよしの山
0889文机の肘も氷のひゞきかな
0890我門や松はふた木を三の朝
0891きのふ見し万才に逢ふや嵯峨の町
0892傀儡の赤き頭巾やうめの花
0893うぐひすや梅踏こぼす糊盥
0894紅梅の落花燃らむ馬の糞
0895公達に狐化けり宵の春
0896連歌してもどる夜鳥羽の蛙かな
0897雛の燈にいぬきが袂かゝるなり
0898たらちねの抓まずありや雛の鼻
0899卯の花はなど咲である雛の宿
0900古びなやむかしの人の袖几帳

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0901箱を出る貌わすれめや雛二対
0902畑うちや法三章の札のもと
0903畠打や峯の御坊の鶏のこゑ
0904山吹や井手を流るゝ鉋屑 
0905裏門の寺に逢着す蓬かな
0906遅き日や谺聞る京の隅 
0907空にふるのはみよしのゝさくら嵯峨の花 
0908すゞしさをあつめて四つの山おろし
0909涼さやかしこき人の歩行渉り
0910我影を浅瀬に踏てすゞみかな
0911塵塚の髑髏にあける青田かな
0912あだ花は雨にうたれて瓜ばたけ
0913桜なきもろこしかけてけふの月
0914鬼すだく露のやどりやのちの月
0915関の燈をともせば消る野分哉
0916線香やますほのすゝき二三本
0917君見よや拾遺の茸の露五本
0918西行の夜具も出て有紅葉哉
0919ひつぢ田にもみぢちりかゝるゆふ日哉
0920しぐるゝや長田が館の風呂時分
0921身ひとつの鳰のうきすや置巨燵
0922冬鴬むかし王維が垣根哉
0923うぐひすや何ごそつかす藪の霜
0924しら梅に明る夜ばかりとなりにけり 
0925うぐひすや野中の墓の竹百竿
0926住吉に天満神のむめ咲ぬ
0927小豆売小家の梅のつぼみがち
0928やぶいりや鉄漿もらひ来る傘の下
0929やぶ入のまたいで過ぬ鳳巾の糸
0930畑打よこちの在所の鐘が鳴
0931野袴の法師が旅や春の風
0932春風のつまかへしたり春曙抄
0933曙のむらさきの幕や春の風
0934壬生寺の猿うらみ啼けおぼろ月
0935蝸牛のかくれ顔なる葉うら哉
0936出る杭のうつゝなき身やかたつぶり
0937茂右衛門が筑波とはゞや麦の秋
0938水底の草にこがるゝほたる哉
0939笠脱て帰る梵論ありせみの声
0940骨拾ふ人にしたしき菫かな
0941摂待へよらで過行狂女哉
0942朝露やまだ霜しらぬ髪の落
0943角力取つげの小櫛をかりの宿
0944みのむしや秋ひだるしと鳴なめり
0945三輪の田に頭巾着てゐるかゞし哉
0946かつまたの池は闇也けふの月
0947鬼老て河原の院の月に泣ク
0948庵の月主を問へば芋堀ニ
0949長き夜や通夜の連歌のこぼれ月
0950石を打狐守る夜のきぬた哉
0951書つゞる師の鼻赤き夜寒哉
0952美人泣浅茅が宿やしかの声
0953錦木は吹倒されてけいとう花
0954そば刈て居るや我行道のはた
0955鬼すだく戸隠のふもとそばの花
0956椎拾ふ横河の児のいとまかな
0957剃立て門松風やふくろくじゆ
0958春雨や菜めしにさます蝶の夢
0959むくと起て雉追ふ犬や宝でら
0960雛祭る都はづれや桃の月
0961さくらより桃にしたしき小家哉
0962帰る雁田ごとの月の曇る夜に
0963又平に逢ふや御室の花ざかり
0964命婦よりぼた餅たばす彼岸哉
0965枕する春の流れやみだれ髪
0966返歌なき青女房よくれの春
0967行春や水も柳のいとに寄る
0968色も香もうしろ姿や弥生尽
0969袷着て身は世にありのすさび哉
0970広庭のぼたんや天の一方に
0971若葉して水白く麦黄ミたり
0972河童の恋する宿や夏の月
0973眉計出して昼寝のうちわかな
0974揚州の津も見へそめて雲の峯
0975水深く利鎌鳴らす真菰刈
0976虫のために害はれ落ッ柿の花
0977稲妻にこぼるゝ音や竹の露
0978名月や神泉苑の魚躍る
0979水かれて池のひづみや後の月
0980十月の今宵はしぐれ後の月
0981客僧の二階下リ来る野分哉
0982小路行ばちかく聞ゆるきぬた哉
0983きりぎりす自在をのぼる夜寒哉
0984己が身の闇より吼て夜半の秋
0985鬼貫や新酒の中の貧に処ス
0986百日の鯉切尽て鱸かな
0987朝貌にうすきゆかりの木槿哉
0988紅葉見や用意かしこき傘弐本
0989なつかしきしをにがもとの野菊哉
0990葛の葉のうらみ貌なる細雨哉
0991水かれ/\蓼歟あらぬ歟蕎麦歟否歟
0992秋の燈やゆかしき奈良の道具市
0993蕭条として石に日の入枯野かな
0994寒月や鋸岩のあからさま
0995寒月や衆徒の群議の過て後
0996雪の暮鴫はもどつて居るような
0997鯨売市に刀を皷しけり
0998すゝ払や塵に交る夜のとの
0999ゆく年の瀬田を廻るや金飛脚
1000雪月花つゐに三世のちぎりかな

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